


ライブで“大人の音”をふつうに浴びることが大事。
—— まずは、この作品に参加した理由などを聞かせてください。
— PUSHIM —
PUSHIM (以下P) :
誰かと音楽を一緒に作るってすごく楽しいこと。しかも、この5人とはもう長い付き合いなので、この面子で歌うことにまったく違和感がなかったというか、絶対いいもんができるだろうなと思って。あとやっぱり自分も一昨年子どもが産まれたし、こういう作品に参加できるのはいいことやな、と。
Leyona (以下L) : 私も、まずはこの素敵なガールズたち(笑)。みんなと何かできるってことがすごく嬉しくて。テーマの“子ども”ってことで言うと、子どものころ聞いた音楽は大人になっても残ると思うんですよね。父がすごく歌が好きで、家でいつも歌ってるような人だったんですけど、私はそれを今でも覚えていたりするし。だから今度は、自分の歌を子どもたちが聞いてくれて、それが何かしらの形で残ってくれたらいいなと思って。
bird (以下B) : 私も2人とまったく同じ思いで、参加メンバーが自分にとって近い存在というのがすごく大きかったですね。みんなと出会ってからずいぶん経つけど、一人ひとり自分の個性を大切にしながらずっと歌い続けてる。そういう人たちと1枚形にできるのはとても嬉しいこと。私も子どもはいますけど、子どもたちと一緒に作品を作るのは初めてだったので、そこにもすごく興味があったし。子供たちには、まだ聞いたことのない素敵な音楽がいっぱいあるってことを、体感するきっかけになってくれたらいいなと。
—— “音楽と子ども”というテーマについてはどう思いますか?
B : 最近、ライブに二世代で来てくれる人が多いんですけど、親がライブに足を運ぶってことが日常になるといいなって。親がそうだと、子どももライブがすごく身近になって、またどこかにおもしろい音楽があるんじゃないかって楽しみになると思うので。
—— 世の中には、こんなにおもしろい音楽があったのか!と。
L : テレビだけじゃ伝わらないものっていっぱいありますからね。外に出て体感するって大切。
— bird —
B :
爆音をドーンッ!と(笑)浴びる感じを味わってほしい。子どもからすると、ものすごく大人っぽい曲なのかもしれないけど、その音をふつうに浴びることが大事なのかなって。子どもって、もちろん子ども向けの歌も好きだけど、大人っぽくてかっこいい音楽にも無条件に反応するし。だから、音楽はあえて子どもの目線に寄らなくていいと思うんですよね。
L : それは私もすごく思います。初めはどんな音楽かわからなくても、なんかすごく気になる!っていう感覚が大事。私自身も、小学校のころ、父がザ・プラターズ「16 tons」の日本語版を歌っているのを聞いてすごく気になって、地元のホームセンターでCDを買ったのが始まり。そこからブラック・ミュージックを探求していって今があるんですよね。プラターズなんてまったく子ども寄りじゃないけれど、ビートだったり、メロディーで何かピンとくるものがあったんだと思う。だから、自分で自由に好きな音楽をピックアップできる環境があるといいですよね。クラスのみんなが聞いているから聞くとかじゃなくて。
子どもには、「あのステージに立ちたい」っていう憧れが必要。
P : 子どもには“憧れ”が必要やと思うんですよ。小さいときにステージで歌ってる人の姿を観て、かっこいいなとか、私もこういう歌を歌いたいなとか、そういう憧れがあるってすごくいい。子どもにとっては、ステージ上の人がめっちゃ神々しく見えると思うんですよ。私自身も小さい頃、こんなんなりたいって憧れを抱いたことから始まっているし。まず夢が持てるじゃないですか。音楽にはそういう力がある。あのステージに立ちたいっていう気持ちが将来を大きくさせると思う。
B : そういうふうに思えるきっかけの場が増えるといいよね。特に歌は、誰でもすぐ始められるでしょ。子どもと暮らしていて思うのは、音楽に触れるきっかけとして一番入りやすいのは“歌”なんだなって。楽器は練習しないとできないけど、歌は耳に届いた瞬間、意味がわからなくても口ずさめちゃう。ダイレクト。歌っていいなって改めて思いますね。
—— birdさんは、キッズ・コーラスの現場に立ち会ったんですよね?
B : カバー曲のときですね。私は子どもたちと一緒に歌うという経験がなかったから、コーラスのラインをまず考えて、現場ではKeycoさんにディレクションをお願いしました。ふつうにコーラス・ワークとして旋律を積んでしまったんで、ややこしい旋律とかあったんだけど、ものすごくスムーズに進んでびっくり。子どもたちが覚えるのも早いし、Keycoさんの指導がすごくて。「まずは聴く! そして歌う!」みたいな男気あふれる感じ(笑)。感動しました。
L : 私も、「一人の手」はコーラス・アレンジだけ作って、現場はKeycoにディレクションをお願いしたんですけど、やっぱり気心知れた仲だからすごく安心感があって。
—— オリジナル曲「Wonderful World Beautiful People」も、6人が気心知れた仲だからこそ実現できた曲なんでしょうね。皆さんは、前の人のパートのみ聞いて録音したと聞きました。
P : みんなのことを知ってるっていうのは、かなり大きかったと思います。全員の歌を聞かなくても、どんな歌い手さんかわかってる分、まったく心配しなかったというか。完成形を聞いて、「みんな大人やな」って思わずニヤッとしてもうた(笑)。いろいろ苦労も知ってるんやろうな、大人の女やなって。言葉数が多いわけじゃないけど、じんわり漂ってきて。
L : 確かに(笑)
B : 渋みがあったね(笑)
—— そこは大人の言葉でってことですね。
B : そうですね。子どもと一緒に歌う歌だからといって、大人が歩み寄ろうとすると、子どもが一番敏感に反応しちゃう。だからいつもどおりで。
L : わからない言葉があっても、それがひっかかる元になったりするかもしれないし、想像力を持たせるってことも大事なのかなって。
—— この曲には、PUSHIMさんのお子さんの声も入っているとか。
P : レコーディング・ブースの中で遊んでいたら、そのときの笑い声を「録っておきました!」って(笑)。子どもはひっきりなしに走り回って遊んでました。ずっとLeyonaが相手してくれていて。
L : 最初なかなか振り向いてくれなくて。でも、ふとした瞬間から仲良くなりました(笑)
思い描ける“Wonderful World”があるってことこそ素晴らしい。
—— カバーの選曲理由について教えてください。birdさんは「Over The Rainbow」。
B : この曲自体、日差しを浴びているっていうか、陽気というか、すごく輝いてる感じがして。それを子どもたちと一緒に歌ったら一層楽しくなるかなって。もともとはミュージカルの歌なので、ミュージカルに抵抗ある人にとっては、そこで線引きされちゃうかもしれないけど、アレンジが変わればこういう感じになるんだよってことも伝えたくて。鼻歌とか、口ずさむだけでもすごく立っている歌。それこそ歌だけで成立するってところが素敵だなと思って選びました。
— Leyona —
L :
私の「一人の手」は、子どものころ何かで聞いた歌なんですけど、その記憶が最近になって急に顔を出してきて、ちょうどいい歌だなと思っていたときだったので。“一人じゃ何もできない”みたいな内容なんですけど、そういうことは大人になってからのほうがわかるのなって。シンプルな歌詞で、「本当そうですね!」っていちいち頷いちゃう(笑)。自分自身、大人になっても思い出せた歌なので、子どもたちにとっても心の中にずっと残る歌であってほしいなと思って。
P : 私は、今回オリジナル曲しか参加できなかったんですけど、個人的には自分もカバー・アルバムを作っていて、古い歌の素晴らしさをしみじみ感じています。きっと今の小さい子らが知らんような“いい歌”っていっぱいあると思う。そういう歌をカバーして新たなものにして、たくさん残していきたいですね。新しい歌だけ知っていて、「古い歌なんか知らん」なんて自慢にならないと思う。自分の心をリッチにするためにも、いい歌はリメイクして歌って、それを新しい世代が聞ける環境を残していけたらいいなと思ってます。
—— では、第1弾の3人にもお聞きしましたが、皆さんが思い描く“Wonderful World”とは?
P : ふと、海がきれいなところって思った(笑)
L : あぁ、きっと、そうやってそれぞれが思い描く「いいな」って場所なんだと思う。今、そう思えることってすごく大事。思い描ける“Wonderful World”があるってことこそ素晴らしい。
P : そうやね。海はね、よくジャマイカに行くから思い出したんやけど、ジャマイカは昭和っぽいんです。うちらが小さいころは、近所の人が叱ってくれたでしょ。ジャマイカもそうで、人との関わり合いって美しいなと思う場面がいっぱいある。大人になってそれに直面すると、自分の人生の中にもあったなって思い出すんですよ。助け合いが自然とできる。“Wonderful World”は、そういう世界じゃないかな。
B : うん、人との関わり合いで見出す何か、そういうものを感じ取れる場所がたくさんある世界だろうね。私たちの世代は、まだ「懐かしかったな」って覚えているけど、今の大都会に住んでいる子どもたちは、はたしてそういうことを感じて大きくなれてるのかなって思う。でも、これからそういう場所に連れていってあげることもできるだろうし、そこで何かを共有できたら、きっといい未来につながっていくんだろうなと思います。