原作者トーベ・ヤンソンについて
- 作品紹介
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森の中には「トロール」という生き物が住んでいるという北欧の民話があります。作者トーベは若いころにおじさんに聞いたこの話から、ムーミントロールというキャラクターを作り出したと言われています。現在みなさんにおなじみのムーミンは、ぴんと立った耳、丸い大きな鼻、丸く突き出たおなかに短い手足、そしてふさのついた長いしっぽを持っていますが、1934年、まだムーミンのお話が世に出るずっと前に19歳のトーベが描いた『黒いムーミントロール』という水彩画は、今とは似ても似つかぬムーミンです。その後も雑誌や市役所の壁画にムーミンはちらほらと登場し、シリーズ1作目の『小さなトロールと大きな洪水』で正式にデビューしますが、それでも初期のムーミンは今よりも違ってみえます。物語のムーミンシリーズと平行して、トーベは弟ラルスとイギリスの新聞「イブニング・ニューズ」にムーミンのコミックの連載を始めますが、キャラクターの容姿、種類、性格が物語とは変わっているところが見られます。物語とコミックとの違いを見つけてみるのも楽しいかもしれません。
物語のシリーズは9作目の『ムーミン谷の十一月』で終わっていますが、ムーミンの物語は新聞のマンガの他にも劇やオペラとなって劇場で公演されたり、日本でも2回テレビアニメ化されて、後に海外でも放映されたりと、さまざまな形で世界中の人たちに愛されてきました。トーベの母国フィンランドのタンペレには1987年に「ムーミン谷美術館」が、1993年にはナーンタリに「ムーミン・ワールド」というテーマパークがオープンし、ムーミン屋敷やムーミンの原画を楽しめるようになっています。
日本ではアニメのムーミンの印象が強いかもしれません。原作の物語やコミックにはムーミン一家と仲間たちの生い立ちやさまざまなエピソード、ちょっとした言葉など、不思議な魅力にあふれています。現在日本ではムーミン関連の本が多く出版され、公式サイトもあります。深く知るほどに改めてムーミンに、そしてムーミンの世界のとりこになることと思います。